誰も見ないで
第16章 全部知りたいのに
さっき賑やかだった女の子達は、見れただろうか
この顔を見たらきっと、もっと好きになってしまう
それぐらいいつもの正樹君と違う、外面で繕い切れなくなった人間らしい表情だった
正樹君はすぐに手で顔を覆ってしまって、次に手を離した時にはもういつも通りの表情に戻っていた
「大丈夫。その……一応、知ってるから」
それでも、やっぱりいつもと違って恥ずかしそうな感じは素直に可愛くて
大和君の恋人が正樹君でよかった
なんて、勝手に思っていた
一足先に高校を卒業した大和君はというと、就職するかと思ったら
『やりたいことあるから進学する。学費は親が立て替えてくれるらしいから、バイトすりゃどうにかなんだろ』
とあっさり進学を決めて
努力の末第一志望の大学へ入学を決めた
偏差値もそこそこ高い大学だったのに、あぁやって当然のように努力できるのってすごいよね
「同じ大学を目指したりしないんですか?」
「……っ」
ぴく、と表情筋を一瞬だけ動かした正樹君は、俯いて表情を隠してしまう
そして、僕だけに聞こえるような小さな声で
「同じか、は……わからないけど、大学行ったら一緒に……住もう、って……」
と言った