誰も見ないで
第16章 全部知りたいのに
「! いいですね!」
僕が笑うと、正樹君は髪の隙間からチラリと僕を見た
「あの、さ……湊斗と一緒に住んでてどう? 喧嘩とか、すれ違いとか……」
そして正樹君の口から出たのは、恋人同士で一緒に住む先輩としての僕に教えを請うような内容
「喧嘩……は……言い合いみたいなのはしたことないんですけど、何かあった時は、一緒に住んでるからこそすぐに解決できる気がします」
そう言いながら、僕はこれまでの湊斗君との生活を思い返す
どんなことがあっても、結局帰る場所が一緒だから顔を合わせないわけにはいかないし
顔を合わせたら、お互いの変化に気がつく
何かあった? とか
どうしたの? とか
そんな何気ない一言から始まってちゃんと話し合えば、何でも2人で乗り越えられる
そう思ったこともちょっと正樹君に伝えると、納得したような顔で
「そう、だよね」
と言った
それから少し考える間を開けるように黙って
そして、笑った
「瑞稀君で良かった」
「へ……?」
「大事な幼馴染の恋人が、瑞稀君で良かった」
さっきまで僕が正樹君に考えていたことを言われて、ちょっと驚いた