誰も見ないで
第16章 全部知りたいのに
「お昼ご飯もまだだけど、ちょっとお昼寝しちゃおっか」
そう言いながら僕の横に身体を滑り込ませた湊斗君は、ベッドの上でも僕を抱き締めた
その安心感の中で目をそっと閉じて
僕はいつの間にか眠りの底へと落ちていた
新しい学年になって
新しい生徒を迎えて
1ヶ月が経った
クラスにも慣れてきたののついでに、毎日帰りに女子生徒の目を独り占めにする湊斗君の姿にも慣れてきた
そんなある日
お昼休みを湊斗君と過ごして、少し余裕を持った時間に教室へと戻ってきた僕は自分の机で読みかけの本を読んでいた
すると
「あっ見て!渡辺君だ!」
「ほんとだ〜かっこいい〜」
次が移動教室だと言っていた湊斗君が僕の教室の前を通りがかったらしく、クラスの女の子達が騒いでいるのが耳に入った
パッと顔を上げて見たけど、そこにはもう湊斗君の姿はなくて
ちょっと残念な気持ちになりながら本に意識を戻そうとした
けどそれより前に
「あーあ……渡辺君の姿が見られるのもあと1年ないのかぁ……」
と呟く声が聞こえて、つい耳がそっちへと意識を移してしまう
「目の保養がなくなる〜……」