誰も見ないで
第16章 全部知りたいのに
僕がそう言うと、「いじわる……」と湊斗君は僕の言葉を噛みしめるように繰り返した
「ただ、拗ねてただけ。また新入生が入ってきて、湊斗君のこと見る目が増えるんだなって思って」
せっかく卒業して減ったのに、なんて言うのは酷すぎるだろうか
すると湊斗君は僕の髪の毛を指先で遊んだ
この後湊斗君がなんて言うのかなんてわかってる
「誰も俺のことなんて見てないよ」
ほらね
誰もが湊斗君に目を奪われてるなんて、本人には全く自覚がないんだから
僕はわざわざそれを否定するのもなんだか違う気がして
「そうだね」と小さく同意してから口を塞ぐように湊斗君の胸に顔を埋めた
優しく包み込んでくれる湊斗君の腕が心地よくてそのまま目を閉じる
すると湊斗君からは見えないはずなのに
「瑞稀君、眠いの?」
と言われて
驚いた
こう言うところはすごく察しがいいのはどうしてだろう
不思議に思いつつも、肯定したらどうなるのかなって思って
「……ん」
と答えてみる
そしたら突然僕の身体がふわっと浮いて
ごそごそ靴を脱いだらしい湊斗君がそのまま部屋の中に入った
そして寝室に連れていかれると優しくベッドの上に下されて、寝かされた