誰も見ないで
第16章 全部知りたいのに
それもそのはず
割って入ったのは、湊斗君に並ぶ学校の王子様
正樹君だったから
「えっ……あ、えと……」
「俺が聞いてもあいつ教えてくれないからさ、気になってたんだよね俺も」
にこ、と笑う正樹君の顔に女の子達は釘付けだけど
僕にはその顔が怒ってるように見えた
「原君が知らないんだったら、きっと本当にただの噂だと思う……」
「でも先生が話してるの聞いたんでしょ? 進路調査票の提出期限は過ぎてるから、聞いたのが本当なら信憑性あると思うな」
あいつほんと恥ずかしがり屋で教えてくれないからお願い、と困ったような顔をして手を合わせる正樹君
その顔にも女の子達は顔を赤くしたけど、僕はやっぱり怒ってるって確信した
誰が話すかってアイコンタクトで話し合った女の子達は結局、最初に湊斗君の海外行きの話を出した子を差し出した
「同じ部活の子が……渡辺君のこと、本当に好きで、同じ大学行きたくて……それで、その……悪いことだって知ってるけど職員室で盗み見しに行ったんだって」
聞きたくない
本能的にそう思ったけど、身体が金縛りにあったみたいに動かない
クラスの人達は何故かみんな静まり返っていて、掻き消されることなく女の子の話し声は僕の耳に届いた