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誰も見ないで

第19章 誰も見ないで


そして手をぎゅ、と握られた


「少しの間だけ、お別れ」
「……うん。電話もメールもするし、時間が出来たら帰っても来るから。絶対」


俺を見上げる2つの大きな目に、寂しそうな感情が混ざってないなんて言えない

けど

それも乗り越えて
俺たちは大人になってくのかも


なんて、大袈裟だけど思った


「卒業式、写真送ってね。楽しみにしてるから」
「うん」
「俺も、向こう着いたら自分の部屋とか写真送るね」
「うん。待ってるね」


繋いだ手が

このままくっついて離れなくなったら
瑞稀君は一緒に来てくれるかな


そんなわけないか
切り離してでも、俺たちは俺たちの為に今のこの一瞬だけ離れなきゃいけない

そのかわり

次に会った時には絶対に離さないから


「それじゃあ、俺そろそろ行かないと」


搭乗開始時間はとっくに過ぎてて

後はもう残りの人を待ってるだけなのか、入り口はさっきより静まり返っている

キャビンアテンダントさんの搭乗出来ますよ、という呼び掛けだけが響いていた


「……うん」


ゆっくり頷いた瑞稀君が、少しだけ上を向く

何をして欲しいのかすぐに察して
俺は

離れる前
最後のキスをした

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