誰も見ないで
第20章 誰も見せない
両親が海外へ行って
正樹以外に友達もいない俺は
1人でいるのなんて、もう慣れたって
そう思ってた
けど、瑞稀君に出会ってから
1人を寂しいって感じるようになってしまった
これはもはやある種病気のようなもので
患ったが最後
きっと死ぬまで続くんだろうって思う
「ミナト! 本当に明日帰るんだな」
周りから聞こえる話し声が日本語じゃないのにも慣れた中で、俺にかけられる声
「うん。待たせてる人がいるからね」
返す言葉が日本語じゃないのも、大分自然になってきた
「噂の恋人か。いいなぁ、そんなに好きな人がいて」
「羨ましい?」
「羨ましいよ」
肩を竦めて話す友人は
「でも、その恋人も羨ましいよ。こんなに優秀でイケメンが恋人なんて」
冗談を言って笑いを誘ってくる
「優秀? そうかな」
「MBA取って、ベーカー・スカラー取って優秀じゃないなんて、世界中の人間から怒られるぞ」
4年間、必死で勉強するうちに取った資格や称号
それらを讃えられて、なんだかむず痒い
「そっか……」
「あーあ。ミナトに恋人がいなければ、こっちに残って俺の会社に入って貰いたかったのに。あ、それか恋人もこっちに呼ぶ?」