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誰も見ないで

第20章 誰も見せない


「うん。そうだよね」


頭を撫でると無言で返されるのは、もっとやってってことかな


「……」
「……」


しんと静かな家の中
2人ともまだ玄関で、靴も履いてて
なんて色気のない場所だろうって思う

けど、場所なんて気にならないぐらいに
瑞稀君のそばにいられることが嬉しい


「ただいま、瑞稀君」


俺がそう言うと
瑞稀君の肩が少し震えた


「おかえり、湊斗君」


また泣かせちゃったかな


そう思いつつも、なんだか嬉しいのは


泣かせたくない
悲しい顔させたくない
笑ってて欲しい


って思いと共存して


俺のために泣いてくれて
悲しんでくれて
嬉しい


とどこかで思ってるからだろう


酷い男だね、俺
瑞稀君はこんな俺に捕まって災難なのかもしれない


「……よ、っと」


瑞稀君を胸の上に乗せたまま上半身を起こして壁に背中を預けて座る

瑞稀君は俺の膝の上に


タクシーの中でもこんな格好だったなぁ


なんて心の中で思いながら


「ごめんね、瑞稀君。たくさん待たせて」


ずっと言いたかった謝罪と


「待っててくれてありがとう」


感謝の言葉を口にした

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