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誰も見ないで

第20章 誰も見せない


家の鍵、その中に置いて来たな


「瑞稀君ごめん、鍵開けて? 荷物駅のロッカーに預けて来たから持ってないんだ」


渋々動き出した瑞稀君は鍵を俺の手に押し付けてまたぎゅ、と腕を回した


「ありがと」


頭を撫でてちゅ、と口づけようと近づくと


「!!」


怒ったみたいに首を横に振られた


なに
だめってこと?


困惑していると、焦れたのか結局自分で家の鍵を開けた瑞稀君が俺を家の中へ引っ張り込んで


「わっ……あぶな……!!」


そのまま勢いで倒れるように床に押し倒された


寝転がって久しぶりに見る自宅の天井
それを塞ぐように現れた瑞稀君の顔は、卒業式の会場で見たよりもずっと涙でくしゃくしゃで


「かわいい」


思わず頬を手で撫でると
その顔がゆっくり降りて来て


「……ん」


俺の口が優しく塞がれた

近づいて来たのと同じスピードで瑞稀君が離れたと思ったら


「!」


ぽすん、と胸に顔を埋められる

そして


「最初のキスは…………ぜったい、口が良かったから……」


と拗ねるような口調で言われた


もう、ほんとに


久しぶりの破壊力に、思考も何もかも奪われてしまう

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