かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~
第10章 ダメかな・・・?
『ふふふっ・・・中々良いお城でしょ?』
マリアは嬉しそうに微笑む。
女の一人暮らしには
とても向いてるとは言えないような
古くて狭いアパート
マリアが努力して
頑張って、頑張って
ようやく手に入れた
マリアの城・・・。
引っ越したばかり…
それもあると思うが
荷ほどきしかけの段ボールが
部屋の隅っこにあるくらいで
それと言った家具も
家電も・・・
テレビさえもなかった。
『なぁ…マリア、でもさ
引っ越し、えらく急だったな?』
『ぇ・・・ん、うん・・・まぁね。
出来れば、あと数ヶ月でも
蓄えを増やせたらより良かったかな
私の中では、次の春…あたりにと
思ってたんだけど…ね
物件の空きとかもあるから
タイミング…もありかな』
『???・・・そっか』
マリアの目が少し右往左往するのが
気にかかったが
聞くところによると
マリアはバイトした金は
一切使わずにひたすら貯めて
引っ越し費用と当面の生活費を
用意して
タイミングを見て引っ越したらしい。
旦那にバレないように
日常をこなしながら・・・働いて
かなりの・・・労力だったろうな
『よく・・・やったな』
『ん…?』
『マリア…本当によくやったな』
『ゆぅちゃん・・・』
『頑張ったな…。おめでとう…!』
『んふっ…。ゆぅちゃん、いつも
褒めてくれる(笑)
また頑張ろう~って気になれる
…ありがとう。』
だって、お前
本当に頑張ったじゃねぇか・・・。