テキストサイズ

かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~

第15章 命の・・・重さ

一番肝心な話かもしれないが


当のあの男は・・・


即座に退去していて
既にあのアパートの隣には
いないのだそうだ。




常識的に考えたら当然は当然だけど

あまりに意外に思えてしまって
少し驚いた。



おばさんはあの後話をして
普通は中々出来ない事だが

大家さんから直々に
あの男に退去を依頼したそうなのだ。



実際は、あの男も
「大変なことをしてしまった」
と、言っていて

(ホントかよ…?!)


「どうしよう、どうしよう」と
母親のようなおばさんに
泣きついてたらしい。


おばさんに退去の話をされると
薄々感じたのもあるのか
自らも、そのつもりだと言って
直ぐに出ていったそうだ。


マリアに謝りたいとまで
言ったらしいが

(マジでマジかそれ?許さんぞ?)


それは、おばさんが
厳しく言って留まらせたとのこと。

「それはあなたの勝手な気持ち
彼女に接触しようなどと思ってはいけない

謝って許されることでもなければ
そんな勝手で楽になるのはあなただけ

警察にも行かなかったのだから
彼女に悪いと思うなら

本当に反省しているのなら
全うにやるべきことをなさい」


と諭されて
あの男はあっさり決心したみたいだ。



精神不安かなんか知らないが
やらかした後に
どうしようどうしよう、と言う

救いようのない
肝のちっちぇ男だったみたいだ。





・・・と言うわけで

あのアパートに住むこと自体に
そう問題はない。




あくまで理屈としてであって
マリアの気持ちは別だが。



ついでにマリアの部屋を初めとして
建物全体のメンテナンスも考え

特に女性であるマリアの部屋は一番に
ドアやポストのカギを強化して
セキュリティも変えていく予定だと言う。





『だけどあくまでマリアちゃんが
住みたいかどうかで

マリアちゃんの気持ちが一番だからね?
おばさんに遠慮はいらないから

マリアちゃんの気持ちで決めてちょうだい』





『お…おばさん、何もそこまで…』



マリアも驚いてるが
俺も同感だった。




『当たり前よ?!
本来普通に住んでいるはずだったんだから
あなたは何も悪いことしてないのよ』





驚きの嵐・・・

俺はおばさんの話を
目をシパシパさせて聞いていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ