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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~

第26章 運命は・・・先着順?

下を向いたマリアが
泣いているのがわかった…



〃そばにいたい〃


〃はなれたくない〃




心根を言えば…双方とも
同じ気持ちなんだ





マリアは一度…実家に助けを求めて
身を寄せる


安全策であり…確実に話を進めるために



希望を持った話なんだ



だけど同時に

俺とマリアが離ればなれになる
その事実でもある


気持ちはずっと、いつも
そばにいても


遠くはなれて
さっきまでいた、あの町よりも
うんと遠くにはなれて
別々の場所で暮らす



それが・・・1年になるのか2年になるのか

3年・・・5年

〃いつ〃…なんて保証も約束もない道のり




あるのは・・・俺とマリアが

二人きりで誓った…〃約束〃のみ






『うっ…っぅ、うっ・・・』


『マリア・・・』





『はなれたくない・・・、っ…ぅ…ぅっ』



『・・・』





よほど…このまま
マリアを自宅に連れて帰ろうと思った



一晩くらい・・・どうせ
あと一晩くらいなんだから…なんて




だけど





『マリア・・・』




『グスっ…っ、ごめん…ゆぅちゃん
私だけ・・・駄々こねるとか…バカだね

そもそも、私が言い出した…
私が決めたことなのに…ごめん

もう言わない・・・』







『マリア・・・』





『あと・・・少しだけ
一緒にいて・・・?

あとちょっとだけ
こうして・・・いさせて』




マリアは泣いてる顔を上げられず
俺の前に立ったまま
そっと両腕を俺の背中にまわして
俺を抱いた…






『マリア・・・。・・・うん』






この数日間が
俺とマリアに与えたものは
思うよりも沢山あると思う


俺たちの中に、さらに
強い絆(なにか)を芽生えさせた…





胸の内をさらけ出して
俺に甘えるようなマリア…



こんな状況なのに…俺は
そんなマリアを

ちょっとカワイイ…とか
多分思ってて

(ホントはめちゃくちゃカワイイ…と)



俺はマリアを抱きかえして
小さく震えるその背中を
トントンと…何度もさすった



俺…もっと強くなるぜ?
とか
仕事も…頑張るぜ


なんて・・・そんな気持ちにさせてくれる

俺にしかわかんねぇ

不思議な・・・〃マリアのチカラ〃





『会いに・・・行くからさ』

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