マリア
第9章 傾想曲
「かっ、帰る!!」
和「ふふっ。バイバーイ♪」
手を振りながらバスルームに消えてゆく二宮に見送られ、
エレベーターホールへと向かった。
途中、妄想してしまった智のエロい声だとか姿だとかが頭を過って、
それらを打ち消すみたいに、エレベーターの開くボタンをカチカチと連打してしまう。
でも、エレベーターに乗り込んですぐ、下の階のボタンに目がいって、
何故か押したい衝動に駆られてしまう。
和『兄貴とヤったかどうか知りたくないの?』
…何考えてんだ?俺?
今、あの部屋を訪ねたところであの、精神科医しかいないだろ?
しかも、俺、あのイケメンと面識もないしなあ?
そりゃ、確かに気になるけど…
気になるけど、今んところ本人たちしか知り得ないことだし、
本人たちのうちどちらかに聞いてみないことには分からないわけだし、
かと言って、本人たちに「ヤりましたか?」って聞くのも変だしな。
仮に、聞いたところで素直にヤりました、って言うかどうかも分かんないし…。
「………。」
何考えてんだか…俺も。
智…
もし、もしさ、
お前が二宮の言う通り、あのイケメンのことが好きで好きでしようがないなら…
もしそうなら、俺…
ふっ、と浮かんだ考えを打ち消すみたいに頭を壁に押し付ける。
…ヤバい。おかしくなりそう。
一体、どーすりゃいーんだ!?
壁に凭れ、がしゃがしゃと頭を掻き毟ると天井を仰ぎ見た。