マリア
第11章 変奏曲 ①
和也side
「いいよ、別に…」
アイツがいつ来てもいいようにドアは施錠していない。
不用心だろ?って、雅紀に笑われたことがあったけど、
俺は一向に構わない。
アイツがいつ来てもいいように、
アイツがいつ俺を殺しに来てもいいように、
開けっぱなしにしてあるんだから。
「ね…アンタは一体いつになったら俺のこと殺してくれんの?」
潤「和也くん…もう…。」
「早くしないと、俺、また、アンタの大切なものを壊しちゃうよ?」
ゆるりと体を起こし、唇を噛み締め俯く綺麗な顔を見つめる。
和「今さら何躊躇ってんの?一人殺すも二人殺すも同じじゃん?」
薄く笑いながら歩み寄り、俯いたままのその綺麗な顔を覗き込む。
「いいの?また、ヤッちゃうよ?あん時みたいに?」
潤「またやる…って…今度は誰を…?」
「えっ?誰、って…。今、アンタのすぐ側にいるの、ってあの、可愛らしい男の子しかいないじゃん?」
一瞬目を逸らし、くっきりした二重の大きな目を見開く。
潤「まさか…大野くん…?」
「正解。」
潤「あの子は関係ないだろう!?」
静かだけど怒気を孕んだ小さな声。
心の一番表立った所で渦巻くどす黒いものを擽られたような気がして、
その心地よさに思わず声を立てて笑ってしまう。
「アンタがそう思っていても向こうがそう思ってなかったら?」