
マリア
第11章 変奏曲 ①
「ちょっと、そこのお兄さん?」
俺はその場で体育座りをしたまま、相も変わらずタバコ片手にプカプカを煙を吐く茶髪のひょろっとした男に話しかけた。
「今からそんなもん吸ってると早く老けるよ?」
すると、その茶髪はタバコを口から引っこ抜き、ゆっくりとこちらを振り返った。
そして、手摺に凭れたままふーっ、と煙を吐くと、タバコを手摺にグリグリ押し付けて揉み消し、
ポケットに手を入れ、ビニール袋にソイツを丁寧にくるんでまた、ポケットにしまいこんだ。
そのままもう片方の手もポケットに突っ込み、
こちらに向かってゆっくり歩いてきた。
え?まさか、俺、どつかれる、とか?
が、茶髪は俺の側まで来ると俺の真ん前でしゃがみこみ、顔をくしゃくしゃにして笑った。
雅「分かった。明日っから本数減らすわ。」
ぽんぽんと俺の肩を叩く。
雅「こんなカワイイ子にそこまで言われたら言うこと聞くしかないでしょ?」
は?カワイイって?俺が?
コイツ、目、悪いのかな?
それともバカなの?
しばらく、コイツの顔を見ていたら、顔が近づいてきて、
タバコの匂いがする唇にキスされてしまった。
