マリア
第12章 追走曲
智side
翔「…だと思った。」
「え?」
俯き、涙を隠すように僕から離れた翔くん。
翔「アイツだろ?松本とかいう医者のこと。」
「松本先生が何?」
翔「好きなんだろ?」
「な…何のこと?」
何で…どうして翔くんがそんなこと!?
翔「何せ、俺と礼音のことまで相談するぐらいだもんな?」
「それは…礼音の病気が病気だし、先生は医者だから。」
翔「それなら、礼音を担当する先生に聞けばいいことだろ?何で精神科の先生に聞くんだよ?」
「おんなじ医者じゃない?それに、松本先生に声かけたのだってたまたまだったんだから!!」
翔「…どーだか。」
「ホントだってば!」
翔「…どこまで許したの?」
「…どういう意味?」
翔「アイツの家、行ったんだろ?」
「どうしてそれを…」
振り返って僕を見る翔くんの目を見た僕は、背筋が凍りついた。
だって、その顔は、僕の知ってる翔くんじゃなかったから。
しかも、薄ら笑いさえ浮かべて僕へと手を伸ばす。
翔「ね…教えてよ?」
足がすくんで動けないでいる僕の方へと伸ばされる手。
僕の肩に触れる寸前に叩き落とした。