マリア
第12章 追走曲
智side
翔「頼むよ…。」
「………。」
翔くんが…僕を、好き?
礼音のことが好きだったんじゃなかったの?
礼音が病気だから、
僕と礼音が双子だから、
健康なら男でもいい、って、自棄になってるの?
『好きなんだ…』
ねぇ、翔くん?
好き……って、
絵を描くこととか、チョコレートケーキとかを『好き』っていうのとワケが違うんだよ?
僕が松本先生を『好き』って自覚しちゃったみたいに、
僕のこと『好き』だ、って言ってるの?
そうだとして、僕はどうしたらいいの?
側にいることはできるかもしれない。
友だちとしてなら…
でも、恋人として付き合う、っていうのはどうなの?
翔くんのことは嫌いじゃないけど、
そこまでの気持ちがあるのか、って言ったら…
正直…ない。
だって、翔くんとはずっと友だちだったから。
「翔くん、ごめん、僕…」
顔を逸らしながら、
そっと翔くんの体を押し戻そうと胸に手を置いた。