マリア
第12章 追走曲
和「でも、悪い話じゃないでしょ?」
「でも、やっぱ、俺、雅紀に…」
今度は、言葉を遮るように唇を奪われる。
和「そんなこと、アナタが心配しなくてもいいの!その辺はうまくやるから?」
「いや…でも…。」
もし、雅紀に…
雅紀にバレるようなことがあったら俺…
和「親友を裏切ることになる、って思ってんでしょ?そん時はそん時、また、考えましょ?」
「う…ん」
この時、安易に返事をしてしまった自分を俺は、
後で死ぬほど後悔することになる。
雅「しょ・ お・ちゃん!」
「まっ…雅紀!?」
背後からハイテンションな感じで雅紀に声をかけられ、
俺は飛び上がらんばかりに驚いてしまった。
雅「んもー、翔ちゃんてば、何、そんなビビってんの?」
「べ、別にビビってなんか…」
…びっくりした。昨日の今日、二宮にあんなこと言われたばっかだから。
「そ、そんなことより、何だよ?」
雅「あっ!!そうそう。ね、今日お昼、一緒に食べない?」
「そんなことなら全然いいよ?」
雅「ホント?じゃ、翔ちゃんの好きな焼きそばパン奢っちゃう♪」
「え?マ、マジで?」
努めて、明るく、
何事もないように振る舞おうとすればするほど、
何かしらのボロを出しそうで、
俺は毎日を怯えながら過ごす羽目になってしまったんだ。