マリア
第13章 夢想曲
智side
今日は、礼音と仲のよかった看護師さんが辞めるとかで、
挨拶をしたい、という礼音の付き合いで病院に来ていた。
礼「ちょっとここで待ってて?」
礼音はそう僕に言い置くと、ナースステーションの方へ歩いていった。
この日、少し風邪気味だった僕は、
マスクを着けた状態で待合室のベンチに腰かけ、ぼんやりと回りを見ていた。
潤「風邪、引いたの?」
不意に、頭上に降りかかる暖かくて柔らかい声に心音が一瞬高くなる。
「あっ!?……はい。」
潤「外出出来る、ってことは体調はいい方なんだ?」
「まあ…。」
直視できなくて俯くと、
大きくて少し色の白い手のひらが僕の額に押し当てられた。
「あ………」
潤「熱は…ないみたいだね?」
「は……い。」
潤「少し、顔が赤いみたいだけど、ほんとに大丈夫?」
「えっ!?たっ…多分…。」
おかしいな?
確かに熱はないはずなのに、先生が触れた場所が熱をもってるみたいに熱くて、
鼓動も、
体全体が心臓になったみたいにうるさく感じた。
松本先生の手に、自分の手を重ねるみたいに、額にそっと手を置いてみた。
…あったかい。
はっ///僕、ってば何やってんだか…。
潤「ところで、誰か待ってるの?」
「あっ!?い、妹が今…。」
と、ナースステーションの方へ目をやると、
礼音とその看護師さんが、楽しそうに話しながら出てきた。