マリア
第13章 夢想曲
礼音と隣にいる年配の看護師さんが僕らに気がついて、慌てて頭を下げた。
潤「あれ?妹さん、星崎さんと顔見知りなの?」
「はい。礼音が初めてここに入院した時に何かと世話を焼いてもらって、それで…」
潤「そうなの?」
礼「こんにちは。」
大きな花束を抱えた星崎、という看護師を伴って礼音がこちらにやってきた。
潤「星崎さん、長い間、お疲れさまでした。」
松本先生が、星崎さんに握手を求める。
星「松本先生、こちらこそ、お世話になりました。」
潤「とんでもない。こちらこそ。」
星「そう言えば、先生、近々ご結婚されるそうですね?」
潤「あ…いや…その話は…」
「………。」
星「先ほど、病院長のところに挨拶に伺ったら、そう、おっしゃってましたよ?」
礼「先生、結婚するんですか?」
礼音も身を乗り出す。
潤「まだ、正式に決まったわけではないので…」
星「まあ、そうだったんですか?」
潤「すみません。ちょっと用事を思い出して…失礼します。」
松本先生はそそくさと早足で立ち去ろうと背を向けた。