
マリア
第13章 夢想曲
僕は、
あの日あの時感じた熱の正体とか、
先生の言葉の意味を確かめたくて病院に足を運んだ。
でも…
何か、口実を作ってくればよかった。
ただ、病院に来たところで、また、何かを期待しているかのようで少しばつが悪かった。
…やっぱり帰ろう。
心療内科へ続く、ぴかぴかの廊下を引き返す。
あ…でも、何か、相談があるとか言って…
…ダメか。
やっぱり戻ろうと、回れ右して歩き始めた時だった。
生「あれ、君、大野礼音ちゃんの双子の…?」
「その声は…生田先生。」
礼音の主治医で循環器内科の生田先生だった。
生「どうしたの?礼音ちゃんに何かあった?」
普段はいつもニコニコしていることが多い生田先生。
険しい顔で僕のところへやってきた。
「あ、いえ。じゃなくて、その…」
生「君が具合悪いの?」
潤「珍しい組み合わせだな?」
いつの間にか松本先生が僕らの後ろに立っていた。
生「いや…何でここにいるのか、と思って声かけたんだけど?」
一瞬だけ、松本先生と目が合う。
すると、また、あの日のように、
松本先生の目が、
意味深に細められた。
