マリア
第3章 間奏曲
智side
「あっ…あの…!」
僕に呼び止められた先生が立ち止まって振り向く。
「す、すいません!ちょっと聞きたいことがあって…今、忙しいですか?」
「いいよ?何?」
その先生は、にっこり笑うと、わざわざ僕の目の前まで来てくれた。
「隣、いい?」
「あっ!?はい。」
カッコいい先生だなあ。
「で、聞きたいこと、って何?」
「え…と…」
何をどう話せばいいんだろ?
行き交う人がこちらをチラチラと見て行く。
先生は、まごまごしている僕を気遣って、場所を変えよう、と、
ある場所へ連れていった。
「人前じゃ話しにくいことなのかな?と思ってね?」
連れてきてくれたのは小さな会議室。
「別に恋愛相談でも構わないよ?…って、初対面の人間にするわけないか。」
と、抱えていたファイルを脇に置き、椅子に深く腰かけ苦笑した。
「あの…実は、知り合いが心臓が悪くて、今、入院してるんです。」
「うん。」
「で、その人、今、付き合ってる人がいて…その…。」
はっきり聞いちゃっていいのかな?
と、言葉にすることを躊躇っていると、
先生は立ち上がって、僕のすぐ隣の椅子に座り、
小声で聞いてきた。
「間違っていたらゴメン。もしかして、心臓が悪くてもセックスが出来るか、ってことかな?」