マリア
第14章 虚飾曲
雅紀side
大野くんの様子が目に見えて変だったから何だ?と思ったら、
俺の袖口を掴み、泣きそうな顔で俺の顔を見上げながら助けを求めてきた。
いつになくすし詰め状態の電車の中。
真っ青な顔でガタガタ震えながら俯く大野くんの後ろには、
俺らのオヤジとさほど年齢の変わらない、ショボくれたおっさんがへばりついていて、
新聞読むフリして、大野くんのお尻を撫で回していた。
クソ!!この変態オヤジめ!!
朝っぱらから、このいたいけな男子高校生のケツを撫で回すなんざ、神経疑うぜ!!
今にも涙が零れ落ちそうな目で見つめる大野くんに目で合図をすると、
その、変態オヤジの手をひっ捕まえた。
「何やってんの?オッサン?」
俺は、声を潜めそのオッサンを睨み付けた。
「男のケツ撫で回して人生棒にふることになるぜ?いいのかよ?」
そのオヤジは、苦虫を噛み潰したような顔をすると、
俺の手を振りほどき逃げようとした。
「ごめんなさい、は?」
「す…すいません…」
「今度やったらアンタ、全部なくしちゃうからね?」
ダメ押し、とばかりに、そのオヤジの腕を捻り上げたあと解放してやると、
そのオヤジは顔をしかめ背中を丸めながら人混みを掻き分け逃げていった。