マリア
第15章 悲愁曲
カズの部屋を出ていく時、
カズが声をかけてきたような気がしたけど、
…聞こえていないフリをした。
適当な道を歩いて、
目についた適当なベンチに座る。
その間、賑やかに鳴り響いていた俺のスマホ。
着信履歴を調べてみると、カズの名前がびっしり並んでいた。
折り返す気力もなくてスマホをしまおうとした時、
大野くんからのメールが。
『今度の日曜日、午後一時に駅前で。もし、都合が悪いなら連絡下さい。』
大野くんか…。
そう言えば、痴漢撃退のお礼に甘いもの奢ってくれる、って言ってたな?
直ぐに大野くんにOKの返信をする。
『明日はどう?おーのくんさえよかったらだけど?』
ちょうどよかった。
甘いもの食って、大野くんと喋って、
今日のことは、犬に噛まれたんだ、って……
…………。
そう……思えるようになるかな…?
ぼんやりスマホを眺めていると大野くんから返信メールが。
『いいよ?学校が終わったらそっち行こうか?』
『いや、なんなら俺がそっち行こうか?』
……待てよ?
大野くんにこっち来てもらって、一緒にいるところをカズが見たら、
カズ、妬いてくれるかも……?