マリア
第15章 悲愁曲
校門に寄っ掛かって、
笑いながら校舎から出て行く学生服をぼんやり見ていた。
時々、女子生徒が、
俺のことをチラチラと見るから、何だよ?的な目線を送ると、俺の勘違いでなければ彼女たちは、嬉しそうに走り去っていった。
何だ、可愛いじゃん?
俺、ってばモテんじゃん?と思ったら、
この間のことなんて、一瞬だけ忘れることができた。
智「お待たせ。」
後ろから肩を叩かれて振り向くと、
大野くんがその小さな体には大きすぎるスケッチブックを抱え笑っていた。
「待ってないよ?さっき来たばっかだし。」
智「じゃ、いこっか?」
よいしょ、と、大野くんは大きなスケッチブックを抱え直すと、
よろよろと歩き出した。
「持とうか?」
智「ううん。平気。慣れてるから。」
屈託なく笑う。
「遠慮しないで、ここは一つ、相葉くんに任せて?」
智「ふふっ。じゃあ、遠慮なく。」
大野くんからバカでかいスケッチブックを受けとる。
「大野くん、絵、描くんだ?」
智「うん。文化祭の時とかに描いたりする程度だけどね?」
「へえ…」
ちら、とスケッチブックに目をやると、目ざとく大野くんに見つけられてしまう。
智「後で見せてあげる。あ、興味があればの話、だけど?」