マリア
第16章 迷走曲
取り合えず、雅紀と親しいらしいクラスメートに雅紀の住所を聞き出し、
自分がお金を出すからと、
二宮が拾ったタクシーで雅紀の家へと向かった。
え……今の……
智と背格好が似通った少年とすれ違ったような気がして、車を止めさせた。
「もしかして智…くん?」
恐る恐るその背中を呼び止める。
すると、少年は立ち止まってゆるりと振り返った。
智「翔……くん?」
その顔は、かなり憔悴しきっていたものの、
智に間違いなかった。
智「翔くん、どうしてここに?」
「智くんこそ。こんなところで何を?」
無理して笑おうとしていた顔が、
突然涙で歪む。
智「しょ……くん、翔くん、僕…僕ね…?」
道の真ん中だと言うのに、
智は俺にしがみつきワアワアと声を上げて泣き出してしまった。
そんな智をただただ抱きしめることしかできなかった俺は、
唇を強く噛みしめた。
和「兄貴、やっと連絡ついて、今から病院出る、って?」
「そ……か。」
あれから俺は、
泣きじゃくる智を宥めつつタクシーに乗せ、
二宮の部屋へと舞い戻ってきていた。
和「ごめん…俺のせいで…」
二宮は、ベッドですうすう寝息をたて始めた智の手首のアザを見て顔を曇らせた。