マリア
第16章 迷走曲
「謝ったら、俺らの関係を知られる前に戻れんのか、って聞いてんだよ?」
和「そ…そういうつもりじゃ…」
「あのな、智のためになんかしてやりたい、って気持ちは分かるよ?俺だってそうだし。でもさ…」
和「でも?」
二宮は今にも泣き出しそうな目で俺を見上げた。
「今はそっとしといてやれよ。」
和「…わかった。」
と、いうのはたてまえで、とにかく時間稼ぎがしたかった。
だから、取り合えずはそう言っておけば、って思ったんだ。
俺自身、
智に何がしてやれるのか、
智にどう償うべきなのか分からなかったから……。
部屋に戻ると、
智は相変わらずシーツの中に潜り込んだまま出てくる様子はなく、
俺たちは、そんな智を遠巻きにしながら先生の到着を待っていた。
そんな中、控えめにチャイムを鳴らし、松本先生が姿を現した。
潤「え……?」
事の子細を二宮から耳打ちされ、松本先生は青ざめた。
和「ごめん。俺が迂闊なことをしたばっかりに…」
項垂れる二宮の頭をぽんぽんと叩くと、シーツの中に蹲ったままの智の側に腰を下ろした。