マリア
第16章 迷走曲
そう言えば…
和「その日は兄貴も病院にいたはずだから、当然、その事故がらみの怪我人はウチの病院に運ばれてるはずなんだよね?」
「あ……。」
和「…俺の言いたいこと、分かります?」
じゃ誰と……
和「もしかしたら、大野さんと同じガッコの、櫻井さんの知らないお友達かも知れないし…」
あるいは、と、二宮は言葉を濁した。
「まさか…?引っ込み思案な智に限って変な知り合いなんて…」
和「…そのまさかだったらどうします?」
「二宮っ!?」
和「櫻井さんは大野さんのことどれだけ知ってるのかは知りませんけど、交遊関係のすべてを知ってる訳じゃないでしょ?」
「そう…だけど…」
でも、もし、仮に、
智が俺の知らない誰かと会ってたとして、
今の俺がとやかく言う権利なんて…。
和「まあ、ただのお友達かも知れませんしね?」
と、二宮は、自分からふった話題を打ち切ろうとした。
和「そんな気になるんだったら直接本人に聞いてみたら?」
もしかしたら、と思う自分と、智のことを信じたい、という自分がせめぎ合う。
智を自宅へ送り届ける任務を放免された二宮は、
さっさと自宅へ戻っていった。