マリア
第16章 迷走曲
部活を終え、
早速智に電話をするも、電源が切られていて声すら聞くこともできなかった。
この時点ですら、俺は、こんな時期に智が会おう、って思うヤツ、って、
やっぱりあの医者なんだろう、って、信じて疑ってなかった。
翌朝、智に電話をすると、
今日の迎えは、父親の車で行くから必要ないと言われた。
唯一智と過ごせる時間がなくなって残念だったけど、
家族が側にいるんなら安心だ、とばかりに俺は、
何の疑いもなくそのまま真っ直ぐ登校した。
その日も学校に雅紀の姿はなかった。
いっそのこと、このままやめてくれたらいい、とさえ思い始めている俺がいた。
雅紀だって、
俺や二宮とは、顔を合わせづらいだろうから。
部活を終えて、着替えようとロッカールームに向かう途中、
誰かに腕を捕まれこけそうになる。
和「話があるんだけど?」
と、二宮は俺を旧校舎の体育館倉庫にまで連れてきた。
和「ね…昨日、大野さんが誰と会ってたか、って、ホントに知らないんですよね?」
「何だよ?お前の兄貴じゃねぇのかよ?」
二宮は、俺の腕を掴み、さらに俺の体を引き寄せ、さらに声を潜めながら言った。
和「昨日、ウチの兄貴の病院の近くで、車の多重事故があった、って知ってるでしょ?」