マリア
第17章 序曲 ①
智「適当に座ってて?今、お茶持ってくるから。」
お茶……って、智んちのお隣さん特製のブレンド茶、かな?
戦々恐々としながら大人しく座って待ってると、智は俺の目の前にコーヒーを置いた。
え……?コーヒー?
智「一応、ミルクと砂糖も。」
珍しいな?コーヒーなんて。
驚いた顔を智に向けると、逆に不思議そうな顔をされた。
智「何?僕の顔に何か付いてる?」
「あ……ううん。別に?」
取り繕うように、スティックシュガーとミルクをいれた。
「あ、そうそう、これ、お袋から。」
智「あ!リンゴだ!!」
「礼音に、って?で、智くんにはこっち。」
と、お袋お手製のケーキを渡した。
智「わあ…美味しそう♪」
お皿とフォーク、持ってくるね?と、
智は部屋を飛び出した。
「………。」
久しぶりのコーヒー、
人一倍、恥ずかしがりやなはずなのに、道行く人に見せつけるように絡められた腕。
そして、
突然薄れた二宮への執着。
本当に、智本人なのか、と疑いたくなる。
あ……そうだ、二宮に電話してみよう。
もしかしたら出るかも、と、
ポケットからスマホを取りだし二宮の番号にかけた。