マリア
第17章 序曲 ①
次の日、駅で待ち合わせた俺たちはその足で智の家へと向かった。
智「翔くんが家に来るの、って久しぶりじゃない?」
「そうかも?」
あ…そう言えば俺、礼音と付き合ってたんだった。
智「礼音なら今、入院してる。」
「えっ!?あっ、そう…」
智「気まずい、って思ってるんでしょ?」
「まあ…」
智「実は、ここ来る前に顔見てきたんだ。」
「元気なの?」
智「元気じゃないから入院してんじゃないの?」
「まさか…相当悪い、とか…?」
智「そのまさか…って言ったらどうする?」
ふふ、と智は笑うと、俺の腕に腕を絡ませてきた。
「わっ!?」
智「冗談だよ?大事とって入院してるだけ。」
「ちょっ…見られてる…」
智「エヘヘ。いいじゃない?」
智は嬉しそうにぴったりと俺に寄り添った。
いや…じゃないんだけどさ?
智「行こ?」
すれ違う人の奇異なものを見るような目に晒されながら、
智の家を目指した。
智「ちょっと待ってて?今、鍵、開けてくるから。」
俺の腕から離れ、ポケットから家の鍵を取り出す。
智「今、父さんも母さんも仕事でいなくって…」
と、慣れた手つきで智は家の鍵を開けた。