マリア
第4章 輪舞曲
智side
僕は今日も病院に来ていた。
病院に来て、そして、眠る礼音の側にいた。
礼音が起きているときはおしゃべりをし、礼音が好きなリンゴを一緒に食べた。
でも、いつもと違うことが一つだけあった。
そこに僕の親友で礼音の恋人でもある翔くんの姿がないこと。
翔くんはサッカーの試合が近い、ということで、しばらく病院には来れないらしい。
別に、それはそれでいいのだけれど、
いつもいるはずの人が側にいないと何だか落ち着かなくて、
僕は、必需品のように持ち歩いているスケッチブックを広げ、鉛筆を走らせた。
和「ね、あの人、アンタのカレシ?」
「えっ?カ…カレシ…って!?」
大声を張り上げ赤面する僕を見、彼は大きなため息をついた。
和「何驚いてんの?男同士だって、やることはやるでしょ?」
「そう…なんですか?」
和「タメ口でいいよ?」
その人は、興味なさそうにゲーム機に目を落としたまま返事をした。
「あの…。」
和「何?」
「あの人…あの、背の高い人は…」
和「ああ、俺のパトロンもどき。」
「パトロン……もどき?」
和「そ。カラダと引き換えに俺の欲しいもの何でも買ってくれるから。」
「あの…それ、って……?」
和「じゃあ、愛人とパパ、って表現の方が分かりやすいかな?」
彼は一瞬顔を上げ、ため息をつくとまた、ゲーム機に目を落とした。