マリア
第21章 序曲 ②
翔side
この日がバレンタインデーだってことは知ってたけど、
智からの誘いも蹴って、俺は雅紀と会っていた。
雅「ひ、久し振り。」
雅紀は、智に乱暴を働いた負い目からか、
背中を丸めるようにカバンを抱え、俺から顔を逸らせるように向かいに座った。
雅「は、話、って、何?」
じっ、と睨み付けたままの俺からは視線を逸らしたまま雅紀から切り出す。
「髪…戻したんだ?」
雅「えっ!?あっ、う、うん…」
俺に話しかけられただけで必要以上にビクつく雅紀。
「進級できるようになったんだって?」
雅「そ、そう…そうなんだ。」
努めて俺は、雅紀が警戒しないような話題を選んで話を広げていった。
そろそろ、本題に入るか。
「あのさ、雅紀?」
雅「うん?」
「二宮のことなんだけどさ?」
突然、噎せて咳き込んだ。
こいつ、やっぱり、一枚噛んでるっぽいな…
「中々連絡とれなくて、松本先生があちこち探し回ってる。」
雅「へ、へぇ…」
…そんだけかよ!?
「お前、何か、聞いてない?てか、二宮と連絡とったりなんか…」
雅「ご、ごめん、翔ちゃん、き、急用思い出しちゃった!!」
突然立ち上がり、
逃げるように雅紀は帰っていった。