マリア
第21章 序曲 ②
智はしばらく固まったままだったけど、
でも、いつもの、ほっとするような笑顔で言ってくれた。
智「いいよ?寝よっか?」
智はベッドの中に入ると私の体をそっと抱きしめてくれた。
「ふふっ。温かい。」
そのまま智に体を預けると、
小さい頃、いつも同じベッドの中で眠っていたことを思い出した。
カミナリが怖いから、と、私から智のベッドに潜り込んだこともあったし、
怖い夢を見た、と、言っては智が私のベッドに潜り込んできたこともあった。
そうして、昔のことを語り合っているうちに、
智がすうすうと寝息をたて始めた。
私は無邪気な寝顔を晒す智の頬を撫でた。
男の子のくせにほっぺたはつるつるで、睫毛が意外に長くて髪の毛はフワフワで。
「双子の王子さまとお姫さま」、なんて言われて、
「恥ずかしい…」と、私の背中でもじもじしていた智。
今は可愛い、を通り越してとても綺麗な顔立ちの智。
私の双子のお兄ちゃん。
私だけの王子さま。
智……
もしあなたが、翔くんの言ってたようなことに深く関わっているのなら、
私があなたを連れていく。
そして、もう一度、
お母さんのお腹の中で過ごした頃に戻って、人生をやり直させてあげる。
その時は、智、
私も付き合ってあげるから、
また、私のお兄ちゃんとして生まれてきて?
私も……
私も智の妹として生まれてくるから…。
私は、目の前で穏やかな顔で眠る智の体を抱きしめた。