マリア
第21章 序曲 ②
この間まんまと雅紀に逃げられたことから、正攻法は通用しない、と痛感した俺は、
部活を休んで、雅紀の後を付けることにした。
雅紀は背中を丸めカバンを抱え込むようにしながら、
小走りで教室を出ていく。
校門を抜ける時でさえ、辺りを伺うようにきょろきょろしている。
あれ…アイツの家、こっちだっけ?
雅紀は、自宅と反対方向へ、歩いたり少し走ったりを繰り返しながら、
やはり、辺りを見回しながら進んでいく。
どこかに寄り道すんのかな?
どちらにしろ、挙動不審な雅紀の後姿を、息を潜め見守る。
すると、俺のすぐ側を、
黒い出で立ちの、背の高い男が横切る。
小走りで雅紀に気づかれないような距離を保ちつつ、
雅紀の後について行く。
誰だ?
あんな近くにいる、っていうのに雅紀には付けられている意識がないのか、
相変わらず辺りを見回しながら交差点で立ち止まり、赤信号を見上げた。
誰が…雅紀を…?
青に変わると同時に走り出した雅紀は、
そのまま真向かいにあるコンビニへと入っていった。