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マリア

第4章 輪舞曲



智side


礼「今の人、誰?」



眠っていたはずの礼音が、大きな瞳を思い切り開きこちらを見ていた。



「心療内科の松本先生だよ。」


礼「へえ、スッゴいイケメン!あんな先生いたんだ?」


「そうだね…」



僕は椅子に座り直し、スケッチブックをしまった。



礼「どうかした?」


「え?」


礼「だって、機嫌悪いじゃない?」


「そんなこと、ないよ?」


礼「ホントに?」



慌てて取り繕う僕の顔を覗き込もうと、礼音が顔を近づける。



「ちょっ…近いから…。」


礼「正直に言わないとチュウしちゃうぞ?」


「アヤ…ダメだって!?」


後少しで礼音の唇が僕の唇に触れる、というところで、



人の気配を感じ入り口に目をやる。



すると、入り口に呆然と立ち尽くしている人影を見、二人揃って固まってしまう。



「し…しょ…くん?」


礼「え…翔くん?」



勢い余って床に押し倒された僕と、その上に覆い被さる礼音。



翔「何…してんの?」


「え…と…」


礼「ふ、ふざけてたんだよね?」



…確かにそうだけど。



翔「そっ…そうだろうけど…その…」



真っ赤になって俯いてしまった翔くん。



でも…



翔「キス…しようとしてなかった?」





一番見られちゃいけない人に、



見られちゃいけないところを見られてた。



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