マリア
第4章 輪舞曲
礼「昔はふざけてしょっちゅう…ね?」
礼音が僕の顔色を伺うように上目で見てきた。
「あ、当たり前でしょ?ホントにするわけないじゃん?」
まるで、取り調べみたいに、翔くんの目の前に、礼音と二人並んで座らされた。
翔「俺から見たら、礼音から迫ってるように見えたけど?」
「あっ!?僕、花瓶の水、換えてくるね?」
礼「えっ!?ちょっと智?」
と、自分に火の粉が降りかからないうちに、花瓶を手に病室を後にした。
「もうそろそろいいかな?」
建前で持ち出した花瓶の水も換え、
礼音の病室の前に立った。
ノックもせずに病室のドアを少しだけ開けたその時、
ベッドに腰かけた翔くんと礼音が、
夢中でキスをしている姿が目に飛び込んできて、
僕は開きかけたドアを慌てて閉めた。
花瓶を持ったまま元来た道を走り、
目についたベンチに腰を下ろした。
…び、びっくりした。
ベッドに半身だけ起こした礼音にキスをする翔くんは、
さながら、長い眠りから覚めたお姫さまを祝福する王子さまみたいにカッコよくて、
その、祝福のキスを受ける礼音も、本当に童話の中から抜け出てきたお姫さまみたいに綺麗で…
まるで、別世界にいるように絵になる二人の姿に、
ただただ、ため息をつくばかりだった。
和「どしたの?花瓶、そんな大事そうに抱きしめちゃって?」