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マリア

第22章 遁走曲



翔side



松本先生と二宮が姿を消した。






二人とも、まだ、動ける体でないにも関わらずに、だ。



二人揃って忽然と姿を消した。





誰にも行き先を告げないまま、



二人が住んでいたマンションもすでに空っぽだったという。





一方、警察に保護された雅紀は、



当然のごとく、根掘り葉掘り事情を聞かれて、





二宮を監禁し、松本先生を刺したことまでは認めたが、







肝心の、薬をどうやって手に入れたかになると、拾った、の一点張りだったらしい。



結局、雅紀は、家庭裁判所の決定により逆送となり、



審判の結果、少年院送致となった。









智「そう……なんだ…?」



早春の、少し肌寒い風が吹き抜ける三月。



河川敷にスケッチブックを広げていた智の隣に座り、



ことの子細を智に伝えた。



智は何でもない風を装ってはいたが、



鉛筆を持つ手が微かに震えていたのを、俺は見逃さなかった。











智「あ…」



瞬間、強い風が吹き抜けて、



智がスケッチしていたタンポポの綿帽子を根こそぎさらっていった。



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