マリア
第22章 遁走曲
「俺が…アンタの足に…」
潤「君が姿を消した時からずっと考えていたことがあって…」
手を握ったまま、天井を見つめた。
潤「もし、君を探し出せたら、二人で東京を離れよう、って。」
「え……?」
潤「どこか…遠いところへでも行って二人で暮らそう、って思っていたんだ。」
「ぷっ……駆け落ちみたい。」
潤「…そうだね?」
重ね合う手を、今度は俺の方から握り返す。
「…いいよ?行こっか?」
潤「本当…に?」
「うん。だって、俺、アンタの足でしょ?足がなかったらどこ行ける、ってんだよ!?」
潤「…違いない。」
「行きたいとこある?」
潤「どこでもいいよ?君が連れてってくれるなら…」
「後で文句言わないでよ?」
潤「言わないよ?」
「じゃ、決まりね?」
指切りを交わすみたいに笑った唇にキスをした。
…いいの?ホントに俺なんかに委ねても?
これからの人生、俺なんぞに委ねても?
もしかしたら、その場所は地獄かもしんないのに。
程なくして俺たちは、
簡単な手荷物以外を処分して、
二人して東京を後にした。