マリア
第23章 変奏曲 ②
礼音side
生「うん、経過も順調、今日は一段と顔色もいいね?」
「春、だからかな?毎年、この季節になると気分がいいから。」
生「…そう。だから、といって無理は…」
「禁物、でしょ?治った訳じゃないから。」
生「そうだね?それじゃ、礼音ちゃん、お大事に?」
「あの…先生。」
生「ん?どうしたの?」
「松本先生から何か連絡はありましたか?」
生「いや…」
先生は急に言葉少なになって、ため息をつきながらぽつり、呟いた。
生「あんな体で一体どこへ…」
あんな体…。
生「あっ!ごめんね?大きな独り言だから。」
先生の、いつもの人懐っこい笑顔で誤魔化される。
知ってる。看護師さんたちが噂してた。
松本先生は刺されて、大ケガして、
そのケガがもとで歩けなくなった、って。
『にのみやくん』と『あいばくん』。
智が電話で口にしていた名前。
その二人が、
松本先生がいなくなったことと関係してる気がしてならなかった。
診察室を出ると、私をもう一つの笑顔が待ち受ける。
智「お疲れさま。先生、何か言ってた?」