マリア
第23章 変奏曲 ②
礼音side
「ただいま…」
智「おかえり。どこ行ってたの?」
「ん?お友だちに会ってたの。」
智「そう。楽しかった?」
「うん。久しぶりだったから話し込んじゃった。」
智「よかったね?」
「智……」
智「なあに?」
「…何でもない。」
智「ふふっ。変な礼音。」
労るように、肩を抱いてくれる智。
智「あ、そうだ!お隣さんがね?ブレンドティー、分けてくれたんだ?」
「ほんと?」
智「何と何のブレンド、って言ってたかなあ?」
「飲めば分かるんじゃない?」
智「そうだね?」
部屋で待ってて、と、
智はキッチンへと消えていった。
智「はい。」
「いい香り。ラベンダー、かな?」
智「そだね?」
無言でお茶を啜った。
智「ね…ホントは誰と会ってたの?」
「んー?誰だと思う?」
おどけて小首を傾げる私に、智が声を張りあげる。
智「分かんないから聞いてんじゃん?大人しく白状しなさい!でないと…」
「きゃー!擽ったい♪助けて〜」
ティーカップを脇に置いて智とはしゃいだ。
久しぶりだった。
智「ねぇ…礼音。」
「ん?」
智「礼音は僕を置いていったりしないよね?」
「智…?」
智「翔くんとか松本先生みたいに僕を見捨てたりしないよね?」
「智……」
智の目から溢れる涙を指先で拭ってあげた。
「何処にも行かない…よ?」
智「あや…ね…。」
小さな子供を宥めるように背中をポンポンと叩いた。
智、私は何処にも行かないよ?
この体がなくなっても、
智の側にいてあげて見守っててあげる。
見守っててあげるから、
その時が来たら私にだけ教えて?
きっとだよ?