マリア
第24章 鎮魂曲
翔side
あれから半年。
智と会わなくなって半年。
サッカー部を引退した俺は、学校から塾へと直行する毎日を送っていた。
今年の夏は取り分け暑くて、
連日連夜の天気予報では、この異常なまでの暑さに注意喚起を怠らなかった。
が、九月に入ってからは、その暑さも嘘のように和らぎ、
夏休み中、勉強に集中するため、部屋の中をギンギンに冷やしていた俺は、
妹や弟たちに、まるで北極グマだの、南極のペンギンだの揶揄されながらも勉強に勤しんだ甲斐あって、
第一志望の大学はA判定をもらうことができた。
そのことをいち早く両親に伝えたくて、俺は駅からダッシュで帰宅した。
「ただいま…」
家に入るとお袋が、深刻そうな顔で電話していた。
スニーカーを脱ぎ揃え、
声を潜めて電話するお袋の脇を通りすぎる。
聞き耳を立てていた訳じゃなかったけど、
お袋は可哀想に、お気の毒に、という言葉を盛んに口にしていた。
だから、誰か亡くなったんだろう、と、いうことは容易に推測できた。
ま、伝えるのは今じゃなくてもいいか。
スクバを床に置き、机の上に問題集を広げた。