マリア
第24章 鎮魂曲
「翔、ちょっといい?」
「いいよ?どうしたの?」
部屋に入るなり、お袋は大きく深呼吸した。
どうしたんだろ?お袋、何だか顔色が悪いな?
それもそのはず、
お袋の口から出てきた言葉に俺は、
聞き間違いか、と思って何度も何度も聞き返した。
「今……何て…?」
「礼音ちゃん、亡くなったそうよ。」
気づいたら俺は電車の中にいて、
俺の家から二駅先の智と礼音の家を目指した。
いつもはあっという間だと思っていた距離は、
いつもより遠く感じた。
電車から降り走ることしばし、
玄関先に『忌中』と書かれた貼り紙が目に入った。
「ああ、翔くん、来てくれたの?」
玄関先で、葬儀会社のスタッフと話し込んでいた智のお父さんが、
家の前にいた俺に気づいて声をかけてくれた。
「おじさん、あの…」
「せっかく来てくれたんだ。上がって?」
お悔やみの言葉をろくに聞こうともせず、
おじさんは俺を家に上げた。