マリア
第24章 鎮魂曲
だっせぇな、俺?
今さら泣いてんのかよ!?と、自分でツッコミながらも一番後ろの椅子に座る。
焼香もすんで、棺の中で眠る礼音の回りに花を手向けて送るため、たくさんの人が取り囲む。
かつての、評判の美少女の変わり果てた姿に誰もが息を飲み、言葉を詰まらせた。
どんな…
どんな表情をしているんだろう?
発作で苦しんだであろうことは聞いている。
そして、たまたま置き場所が変わっていたという薬が入っていたあの小物入れ。
あの、天使のレリーフが印象的だった、礼音お気に入りの小物入れ。
それが、その日は、
ついに礼音の目に触れることなく、礼音は逝ってしまった。
故人との別れを済ませた人たちが次々と帰って行く。
そして、漸く俺は、
礼音と半年ぶりの再会を果たした。
近所でも評判の美少女だった礼音。
智と共に、「双子の王子さまとお姫さま」と、並び評されるほどだった礼音。
「美人薄命」とはよく言ったものだ。
死しても尚、その姿は……。
『…私の見間違いならいいんだけど…。』
お袋の言葉が頭を過る。
胸の前に組まれた蒼白の指先。
その爪の間に残る黒い……。
『猫に引っ掻かれて……』
まさか………?
花に囲まれ眠る礼音の顔は、
見ようによっては安らかな顔のようにも見えたけど、
今の俺には、安らかとはほど遠い、苦悶に満ちた顔に見えた。