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マリア

第24章 鎮魂曲



昨夜のお袋の言葉が気になって、



急遽、俺は学校を休んで葬儀に参列することに決めた。





智「嘘…?翔くん、来てくれたの?」



小雨がパラつく中、



開始時刻の一時間以上も前に姿を現した俺を見て、


智は今にも泣き出しそうな顔で俺の手を取り握りしめた。



「やっぱ、智のことが心配でさ?」


智「嬉しい…ありがと。」



俯き、頬をほんのり染めながら、



智は握りしめた手をまた、ぎゅ、と握り直した。





……なんて。



ホントは昨夜のお袋の言葉の意味を知りたいから、なんて、そんなこと言おうもんなら…



ドラマの見すぎじゃない?って笑われるんだろうな?



でも、一昨日、頻りに気になってしょうがなかった、智の腕の傷を思い出す。



『猫に引っ掻かれて…』



俺、ってば何考えてんだか…。



人影まばらだったセレモニー会館も、



ぱらぱらと人が集まり始め、ざわざわしだしす。



智「僕、もう、行かなきゃ?」


「うん…」



名残惜しそうに振り返りながら、智はホールへと消えていった。



その後を追うように、



俺もゆっくりとホールへと足を踏み入れる。





礼音…。



『翔くん、来てくれたんだね?』



そんな声が聞こえてきそうな、祭壇に飾られた礼音の写真。



笑顔の礼音の写真。



もしかしたら、



俺の隣で笑っていた頃の礼音なのかもしれない、と思ったら、





その笑顔が涙で滲んだ。



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