マリア
第25章 後奏曲
智「へへっ。今の言葉、何だか…」
「え?俺、なんか変だった?」
智「…プロポーズみたい。」
「あっ///!!」
智は目に涙を溜めたまま口許を押さえ笑い始めた。
「…あのさ、笑うか泣くかのどっちかにしてくんない?」
智「ご…ごめん。」
「じ、じゃあ、さ…」
突然、ベッドから起き上がり正座する。
「さ…智がそ…その…プ…プロポーズみたい、ってんなら…そう言うんなら…さ…」
そして、智も俺に倣って目の前に正座する。
智「翔くん…」
てっきり、「よろしくお願いします」の、パターンなのか、と思いきや、
智「…ごめんなさい。」
やっぱり、とガックリ肩を落とす。
智「だって…男同士だから結婚できないし…」
え?マジだったの?と、目を丸くする。
智「…て、当たり前のこと、言うと思った?」
はい、と、栞を挟み直した参考書を俺に手渡しながら、
智は俺の手をきゅ、と握った。
智「受験が終わったら…」
「…終わったら?」
智「二人でどっか行こうか?」
思わず身を乗り出し、智を抱きしめてしまう。
「…うん。」
でもその約束が、
守られることはなかった。