マリア
第4章 輪舞曲
お兄ちゃん…?
父さんじゃなくて、お兄ちゃん?
何だよ、それ?
母さんの葬式にも来なかった上に、本人じゃなくて、その息子を寄越したってのか?
「どうする?帰ってもらう?」
怒りのあまり口をきけないでいる俺を気づかってくれたばあさんが、
アイツの待つ茶の間へと行こうとするのを引き止める。
「お祖母ちゃん、待って!!俺、会うよ、あの人と。」
「和也、無理しなくてもいいんだよ?ここは引き取ってもらうから。」
「平気。無理なんてしてない。」
そうだよ。俺は無理なんてしてない。
むしろ、ウェルカムだよ。
この際だから洗いざらいぶちまけてやる!
母さんが、アンタたち家族に振り回された挙げ句、
どんな死に方をしてったのか、を。
潤「君が…和也くん?」
俺の兄貴と名乗るその男は、物腰も柔らかくて、笑うと全然嫌な感じがしなくて、
むしろ好感が持てた。
潤「初めまして。松本…潤です。」
「ども…。」
感動の兄弟の再会。
…になるはずが、何故か笑いが込み上げる。
潤「ゴメンね?突然押しかけてきて。」
「いえ…」
潤「あの…お母さんのこと…父さんから聞いて…それで…。」
その人は、座布団から降り、俺の目の前に座り直した。