マリア
第26章 終曲
ちょっと待ってて?と、
智はフードを目深に被り、曇りガラスに閉ざされたフロントの小窓を軽く叩いた。
小窓を開け、渡された部屋の鍵を受け取ると、智は顔を俯けたままこちらに駆け寄ってきた。
そして、やはり、俺の手を引きながら薄暗い階段をゆっくり上がってゆく。
部屋の前まで来ると、智は鍵をガチャガチャと何度も左右に回したが開かず、首を左右に捻った。
「貸して?」
力任せに開けようとしている智を見て、ゆっくりと鍵を左右に回してみた。
すると、カチャ、と軽い金属音がして、ドアが簡単に開いた。
照明のスイッチを入れ、いかにも昭和の香り漂う部屋の中を見回しながらエアコンのスイッチを押す。
智はといえば、フードを被ったまま、あちこちを見て回り、バスルームらしきドアを開けながらこちらを見た。
智「シャワー、浴びる?」
「俺はいいよ?先、使ったら?」
智「僕も…いい。」
智はバスルームのドアを閉め、ベッドの上にぽすっと腰を下ろした。
そして、何度も感触を確かめるみたいにポンポンとベッドの上を跳ねた。
智「わぁ…スッゴいフワフワ♪」
嬉しそうに俺の顔を見ながら、隣に座るようにと、隣をポンポン叩いた。