マリア
第26章 終曲
「今日はどうしたの?」
智「何が?」
「何か…こう…スゴいじゃん?」
智「そう?いつもと変わらないと思うけど?」
俺の腕を枕に背を向けていた智が、くるりと向きを変え、ピタリと体をくっ付けてきた。
智「…聞こえる。」
「ん?」
智「翔くんの心臓の音。」
智は俺の胸に耳を押し当てたまま、しばらくじっとしていた。
智「…生きてるって気がする。」
「智…」
泣いてるような気がして、
智の体をそっと抱きしめた。
智「僕は…どうして生きてるんだろ…」
微かに震え啜り泣く声。
泣くなよ、って、言ってやれなくて、
俺は、ただただ智の体を抱きしめていた。
フロントで支払いを済ませてホテルを出る頃には辺りはもう薄暗くなっていた。
あの会話のあと、何度も何度も智に乞われるまま智と繋がった。
いつもは見た目以上にタフな智も、さすがに今回は少し辛そうに時折腰を擦りながら俺のあとを歩いてきていた。
「大丈夫?」
振り返りながら手を差し伸べると、智は照れ臭そうに舌をペロッと出しながら手を握ってきた。