マリア
第27章 悲愴曲
相変わらず智からの音沙汰はない。
もしかしたら智のやつ、
待ち合わせ場所に俺がいないもんだから、すっぽかされた、って怒ってないかな?
それとも、
やっぱり、いざとなったら怖じ気づいたのか、と、
がっかりしてるかな?
とか、段々と思考がマイナスに傾いてゆく。
…そう言えば朝からなんも食ってねぇな。
だから、悪い方へ悪い方へと考えるのか、と、
普段から持ち歩いているシリアルバーにパクつく。
チーズケーキ味、か。
俺が好きだから、って、智にも分けてやったら、あいつ、嬉しそうに食ってたっけ?
そう考えたら泣きそうで、
涙が落っこちてこないようにと顔をあげた。
顔をあげると窓の外は雪。
大きなフワフワの雪が舞っていた。
あ…そう言えば、あの手袋、何処やったっけ?
クローゼットを開けると、
ポケットが異様に膨らんだコートに真っ先に目がいった。
「あった…。」
そいつを取りだし、今日着て行くはずのコートに捩じ込んだ。
あとはここを抜け出せれば…と、窓の外の雪に目を移した。
と、腹にものを入れたせいか、ネガティブに偏っていた頭が、ポジティブな方向へと動き始める。
そうだ窓……!!
窓から出りゃいいんじゃん?